「結(ゆい)」の心 〜白川郷合掌造りから〜
雪道を車で走っていると、なぜかブレーキを踏んでスリップを楽しんでしまう宮西です。
せっかく実家の岐阜にいるので、岐阜でしか出来ない事をしようと思い、岐阜県の白川村にある白川郷合掌造り集落に行ってきました。1995年に世界文化遺産に登録された集落で、下の写真のように、雪の重みに耐える急勾配の屋根をもった家の造りを合掌造りと呼ぶそうです。地元岐阜にあるということで、存在は昔から知っていたもののなぜか、たいしたことないだろうと高をくくって敬遠していた僕ですが、今回訪れてみて、予想外の、驚きと感動の連続でした。合掌造りは、外から見るとただ急勾配の屋根にして作っただけのように見えますが、中から見ると先人達の知恵が詰まった素晴しいものだという事がわかります。真っ黒にすすこけた柱や梁(写真)は、年月によるものではなく、一階にあるいろりから家全体を煙でいぶし、防虫、防腐作用を持たせたもののようで、樹齢300年という巨大な松の梁が100年以上たった今でも現役で合掌造りを支えていました。萱葺き(かやぶき)の屋根を支える木は、ねそと呼ばれる1400ヵ所の結び目(写真)で出来ており、どこかがきしんでも全体としてはバランスを保ち、ゆがみが自然に収まってゆくそうです。こういった先人達の知恵もさることながら、合掌造りは「結(ゆい)」によって造られ、そして支えられてきたということにえらく感銘を受けました。「結」とは村人相互の助け合いの精神で、昔は巨大な萱葺きの屋根(大きい合掌造りは五階建てです)を葺き替える際に、村人総出で作業したそうです。しかし、時代の流れなのか、近年は「結」の精神も廃れ、萱の葺き替えは村人の手ではなく外部委託が主だったようです。そこで、「結」の心を復活させ、次代につなごうという事で、2001年に全国からのボランティアも含め500人以上の協力によって巨大な大屋根が葺きかえられました。写真をお見せできないのが残念ですが、屋根の片側に120人以上が乗り、バケツリレー方式で萱を下から渡して葺くかなり大掛かりな作業で、NHKドキュメントで特集されたり、海外のメディアにも「結」の精神と共にとりあげられたようです。「結」とは、一人では出来ない事をみんなでやること、助け合いの精神、言い換えれば、人に対する思いやり、人のやさしさだと思います。文明の発展とともに人間関係が希薄になったと言われますが、白川村の「結」の心は、人と人とのつながりの大切さ、人に対する思いやりの大切さを、僕に再認識させてくれました。
自分の心を豊かにしてくれる何か、それは割と身近なところにあるのかもしれません。その何かを感じ取れる心を常に用意できたらなぁと思います。/宮西