かつての林業伐採基地として作られた集落跡地に写真を展示したいと思い至ったのは山師・高田久夫さんの一言からでした。生前、高田さんは「あと2,30年もしたらここでの暮らしを知っている人がほとんどいなくなる。それが寂しい」と言われ、何かできないものかと。当時この集落で暮らしていた人たちが山桜の咲く季節に花見に訪れて、ほんの少し(15分ほど)東屋裏の散歩道を歩けば、写真を通して当時へタイムスリップできると思います。ぜひご家族で遊びにいらしてください。孫の代にお話を聞かせてあげてください。そして、トロッコ道が単調で苦痛という話をはじめて歩いた登山者から聞きます。でもトロッコ道脇の森の中に人がいた痕跡、暮らしの痕跡を感じることができたらもっと素敵な道になると思っています。島に暮らす人も観光で訪れた人も、今年の春は小杉谷集落跡地を終点に屋久島の森と人の関わりと人と森の遷移について楽しんで頂ければ幸いです。田平拓也
小杉谷写真展
−遷移−
概要
旧小杉谷小中学校跡地〜東屋の裏手にある自然観察路内に、この森に関わってきた人々の記録となる写真を展示します。内容は斧や鋸で屋久杉と対峙してきた人々、土埋木搬出の様子、そして当時の生活の様子まで。島人が生きた地域の資源としての森や木をどう尊び、木とともに文化を築きあげてきたか、地杉を含む今後の林業の中の森林育成についてまで社会学の観点からその遷移を紹介します。また同時に小杉谷集落跡地をフィールドにエコツアー、生涯学習、学校教育の場となることを目指しています。
展示期間 | 2017 年4 月1 日〜 5 月31 日
展示内容 | 大正から近年の屋久杉伐採の様子
(写真提供 屋久島森林生態系保全センター)
土埋木搬出 小杉谷集落での暮らし 地杉関連
展示場所 | 旧小杉谷小中学校グラウンド
小杉谷東屋〜自然観察路
写真点数 | 40 点(内解説文10 点)
展示サイズ | A1 サイズ(594×841 ミリ)設置方法 | 透明の釣糸で吊るす * 木とコケに負担がないよう緩衝材を設置。景観を損なわないよう注意する。
主催 | 縄文杉発見50 周年記念実行委員会
企画 | GalleryTABIRA
監修 | 王智弘(総合地球環境学研究所研究員)
はじめに
荒川登山口から縄文杉に至る道のりは森の遷移(succession)を見ることができる。この森は江戸時代から近代まで人が手をいれてきた歴史の上にあり、トロッコ上のい森からウィルソン株周辺の江戸期以降に再生した森、そして縄文杉周辺の千年をこえる森がある。この道のりの魅力は40 年の森が300 年、1,000 年と時を経た森の姿をイメージの世界で終わらせることなく、直に知ることができることだ。そして自然と対峙してきた人々の想いを過去の文献、伝承、歴史から学ぶことができる。森林遷移はとても長いスパンで変化する自然の営み。比べると人の営みが点と言える。過去、森林育成の線上で人々がどのような想いで線を結ぶ点を刻んできたのか、そして今後屋久島の森と人がどう関わり、点と点を結んでいくのかを問いかけたいと思う。 (文 : 田平拓也)
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