屋久島ガイド旅楽のエコツアー

黒味岳
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vol.06 森山伸也
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vol.04 柳生真吾
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vol.02 柏倉陽介

yakushima friends

屋久島に魅了された方々の旅を紹介します。
 いつも笑いと感動を一緒に共有できる山仲間で家族ぐるみでお付き合いができる大切な友人のひとりです。そして北欧800kmを踏破したり、震災後の復興を願い東北の山を紹介し続けたり、自然とより近い生活を送るために長野の山村に移住したりとを飄々とさも当たり前のようにやり遂げてしまうひとです。アウトドア各誌でライターとして活躍する彼が屋久島での思い出のひとこまを寄せてくれました。
光と岩と わあ

 
森山伸也

 白状しよう。テントや寝袋、食料などの衣食住を背負って、山を長く歩くことをジンセイの楽しみとするぼくにとって、屋久島はまったく興味をそそられない土地だった。

「あんな小さい島、長く縦走できないぜ」とか「夏は蒸し暑いんじゃないの」とか「交通費5万円なら北海道だよな」などと、まだ踏んだこともない島をなかば見下していた。子供の食わず嫌いと同じである。屋久島が世界遺産に登録され、多くの観光客が縄文杉をめざしているというニュースも、ぼくを屋久島から遠ざけていた。とにかく、屋久島を見るぼくの目は、氷のように冷めていた。

 2009年の秋、ある雑誌の編集長から「屋久島を縦走しにいかないか?」と誘われた。日本列島の山々が赤く染まろうとしている登山絶好シーズンになんでわざわざ屋久島なんだ? と断ろうと思ったが、誘いの主は雑誌の親分、編集長である。休日、上司に無理矢理ゴルフに誘われたサラリーマンのように、ぼくは屋久島へ飛んだ。

 屋久島の山を歩いてわかったことは、オレは屋久島のことをなにひとつわかっていなかったということだった。もてはやされる縄文杉よりももっと豪傑で生命力に満ちた屋久杉は島のいたるところにあったし、島を横断する縦走路へ入れば登山者は少なく、標高2000m級の稜線をテントで2泊、3泊もしながら歩けた。奥岳の稜線にのれば夏でもひんやりと寒く、年末の白谷雲水峡では腰ラッセルを余儀なくされ、3月上旬の宮之浦岳では吹雪に見舞われた。歩けば歩くほど、メディアが作り出したぼくの中の屋久島が、ガラガラと音をたてて崩れ、ホンモノの屋久島が生まれ、成長していった。

「屋久島の山ってどうなの?」と知人に聞かれると、ぼくはいつもこう答える。

「ひたすらドラマチックな山だよ」と。

 こんなに天気がコロコロ変わり、四季がはっきりしている山はそうそうない。暖流が流れる東シナ海にズドンと2000m級の山々が聳える屋久島は、水とともに生きる独立峰だ。

 バケツをひっくり返したような殺人的な雨が降ったかと思えば、次の瞬間にはパキーンと音をたて青空が広がる。鬱蒼とジメジメした密林に包まれていたかと思えば、次の瞬間、視界がぎゅーんと一気に開け爽やかな風が流れる尾根に飛び出る。

 雨となってぼくを濡らした水は、すぐに蒸気となり空へ帰っていく。森を潤した雨も雲となってわき上がり、稜線をなでるように天へと消える。水の動きが手にとるようにわかる。人間の血液のように、水が島を循環している。

 そんなとき、「今年もまた屋久島に戻ってきたんだな」としんみりして、島焼酎『三岳』を欲するのだ。

 


告白   写真   旅樂

森山伸也(Shinya Moriyama)/フリーランスライター

1978年、新潟県三条市生まれ。フリーランスライター。農家のセガレ。4兄弟の次男坊。
10歳からサッカーをはじめ、一時は本気でJリーガーをめざすサッカー少年だった。
大学農学部でアイガモ農法を勉強しながら、というか勉強そっちのけで、探検部に所属しボルネオ島横断などの遠征に没頭する。一度、出版社に就職するも2年半でドロップアウトし、アウトドアライターになる。


とにかく、空の下でメシを食い、ゆっくり歩いて、テントで寝て、自然の中で1日でも長く過ごす山旅が好き。
テーマは、「Life on Trail」
いまは海外のロングトレイルに夢中。3年前から北欧の北極圏へ通っている。

2008年には、The Arctic Trail (Nordkalottlede)を450㎞。

2009年には、スウェーデンのサーレク国立公園を120㎞。

2010年は、The Arctic Trail (Nordkalottlede)とThe Royal Trail(Kungsleden)を繋げて、総延長850㎞を歩く。

2011年は、「日本が大変なときに海外にお金を落とすなんてけしからん!」と日本の山を歩く。
2011年のおもな山行は、

北海道 知床岳 3泊4日(敗退)
北海道 大雪〜富良野岳縦走 8日9日
北海道 日高連峰縦走 4泊5日
東北 飯豊連峰縦走 3泊4日
東北 岩手山〜八幡平縦走 5泊6日
南アルプス 木曽駒ヶ岳〜縦走 3泊4日
長野・新潟 信越トレイル縦走 4泊5日
など。

登山のほか、カヤックの旅も好き。
「BE-PAL」(小学館)、「PEAKS」(エイ出版)、「ワンダーフォーゲル」(山と渓谷社)、「TARZAN」(マガジンハウス)などで執筆してます。


ライター森山伸也の日記 / 森と山


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