屋久島ガイド旅楽のエコツアー

黒味岳
Friends List

vol.06 森山伸也
vol.05 都倉夫妻
vol.04 柳生真吾
vol.03 KIKI
vol.02 柏倉陽介


yakushima friends

屋久島に魅了された旅人のエッセイです。
 何度も訪れている屋久島へご両親を誘って1泊2日の縄文杉に行きました。晴れでも雨でも何処ででも、自然を楽しんでいるKIKIさんの旅のエッセイです。
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 家族と一緒にテントで寝るなんて、いつ以来のことだろう。
 小学生か中学生か。とにかく10代のはじめのころまでは、兄ふたりを交えた家族5人と、両親の同僚たちが集まって、よくキャンプをしていた。あの頃のテントは、生地はずいぶんと重くて、それなのに雨が降るとじわじわと染みて来て、真夜中に車に避難したりしていたわね。と、母が笑いながら言う。シュラフは布団みたいに嵩張ったし、マットも、最近の空気を入れて膨らますタイプの寝心地の良さには感心するわ。
 父を真ん中に川の字にテントのなかで並んだわたしたちは、たわいもない昔話を楽しんでいた。眠ることで夜が過ぎ去ってしまうことを惜しむかのような時間だった。

 これまでに何度となく訪れていた屋久島に、今回は両親と一緒に来ていた。
 わたしが足しげく通うのを見ていたのもひとつの理由、あとはやはりテレビなどで見ていた森の魅力に触れたいと、ずいぶん前から行きたいと母は言っていた。父も興味は持っていたけれど、人の多さを懸念してか話題を避けていたようだ。むしろ山より海のほうが遊ぶ機会が多い人だ。
ヨットでの航海中に島の北にある一湊港に停泊したことがあると自慢気に話していた。
 山の話をすると、なんとなく海の話へ逸らしていく父を説得して、秋の終わるころ、両親とわたしの三人での屋久島行きを決めた。これまでにも何度かお世話になっていたガイドの田平さんに、一泊二日テント泊で縄文杉まで連れて行ってもらうことになった。
 縄文杉は混んでいるのだろう。二日も時間をとるのに、朝だってなんでこんなに早起きしないとならないのだ。行程を聞いて、不平を言う父。けれど、山に入る日の朝、田平さんと会って、時間を一緒に過ごして行くうちに、理由が呑み込めて来たようだった。歩き始めて間もないうちに、バスで一緒だった人々は早足で歩き去り、トロッコ道はずっと先にも振り返ったうしろにも、誰の姿も見えなくなる。いつしか聞こえてくるのは、自分の息づかいと足音。そして風の音。静けさのなかで屋久島の森を歩いていると、照葉樹林のてらてらとした葉っぱを撫でながら、山の斜面を流れてくる風が見えるようだ。
 焦る必要はない。提案してくれた行程は、日帰りで山に入るのと違って、ゆったりと時間を過ごすことができるから。歩くことだけに気を取られてしまう一日なんて、この森ではもったいないことだ。 >>2


 
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KIKI /モデル・女優・エッセイスト

東京生まれ。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒。在学中からモデル活動を開始。
雑誌やTVCMなどの広告、映画・ドラマ出演をはじめ、連載などの執筆、ラジオのナビゲーター、アートイベントの審査員など多方面で活動中。
『OZ magazine』(スターツ出版)にて「early bird」、『LEICA STYLE MAGAZINE』にて「カメラというのりものにのって」好評連載中。
NTV「ゆっくり私時間~my weekend house」、ETV「高校講座~美術」オンエア中。

〔著書〕

公式サイト http://kiki.vis.ne.jp/
公式ブログ http://blog.honeyee.com/kiki/



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